「やっと手に入れたマイホーム。しばらくして届いた納税通知書を支払ったのに、また不動産取得税の通知が来た…」「もしかして二重請求?」と、不安になっていませんか。
ご安心ください。不動産取得税の通知が2回くるのには、ちゃんとした理由がある場合がほとんどです。
この記事では、なぜ不動産取得税の通知が2回に分けて届くのか、その主な理由と届いた時の確認ポイント、そして具体的な対処法まで、専門家が分かりやすく解説します。この記事を読めば、通知の理由が明確になり、落ち着いて正しく対応できるようになります。
不動産取得税の通知が2回くる主な理由
不動産取得税の納税通知書が2回届く背景には、いくつかの理由が考えられます。多くの場合、手続き上のタイムラグによるもので、二重課税ではありません。まずは、どのようなケースがあるのかを理解しましょう。
最も多いケース:土地と建物で課税時期がずれる
新築の戸建て住宅などを購入した場合、不動産取得税の通知が2回に分かれて届く最も一般的な理由が、土地と建物の取得時期・評価時期の違いによるものです。
不動産取得税は、土地と建物をそれぞれ別の不動産として捉え、個別に課税処理を行います。そのため、納税通知書も別々に送付されるのが原則です。
なぜ土地と建物でタイミングが違うのか?
タイミングがずれる理由は、課税の根拠となる評価額が確定するまでのプロセスが異なるためです。
- 土地:多くの場合、売買契約を締結し、所有権移転登記が完了した時点で「取得」とみなされます。登記情報に基づき課税処理が進められるため、比較的早く納税通知書が届きます。
- 建物:新築の場合、建物が完成し、自治体の家屋調査が完了して評価額が決定されてからでないと課税できません。この調査と評価額の確定に時間がかかるため、土地の取得から遅れて通知書が送付されるのです。
それぞれの納税通知書が届く時期の目安
納税通知書が届く時期は、不動産を取得してからおよそ半年から1年後が一般的ですが、都道府県によって異なります。あくまで目安としてお考えください。
対象 | 届く時期の目安 |
土地 | 不動産取得(所有権移転登記)から4ヶ月~半年後 |
建物(新築) | 家屋完成・調査後、土地の通知から数ヶ月~1年後 |
このように、取得から納税通知書が届くまでにはタイムラグがあり、さらに土地と建物で時期がずれるため、忘れた頃に2通目の通知が届くということになります。
軽減措置の申請で納税額が変更された
不動産取得税には、一定の要件を満たす住宅やその敷地について、税負担を軽くするための軽減措置があります。この手続きのタイミングによって、通知が複数回届くことがあります。
軽減措置適用前の納税通知書
軽減措置の適用には、原則として申告が必要です。自治体によっては、申告があるまで軽減措置を適用せずに、まず本則(本来の税額)での納税通知書を送付する場合があります。
軽減措置適用後の還付・変更通知書
本則の税額で納税した後に軽減措置の申告を行うと、納めすぎた税金が還付されます。その際に、「還付通知書」や税額が変更されたことを知らせる「更正通知書」が届きます。
また、先に土地の税金を納めた後、新築された建物が軽減措置の要件を満たすことで、土地の税金も減額される場合があります。この場合も、減額を知らせる通知が別途届くことになります。
まれなケース:二重課税や手違いの可能性
ごくまれに、行政側の手違いで二重に通知書が送られてしまう可能性もゼロではありません。しかし、ほとんどのケースは前述の「土地と建物の分離課税」または「軽減措置」に関連するものです。もし内容を確認しても明らかに不審な点がある場合は、ためらわずに管轄の都道府県税事務所へ問い合わせましょう。
届いた2通の通知書を確認するポイント
実際に2通の通知書が手元に届いたら、慌てずに中身を確認しましょう。以下のポイントをチェックすることで、どのような理由で送られてきたのかを把握できます。
「課税対象」の欄をチェックしよう
納税通知書には、必ず「課税物件」や「課税対象」といった欄があります。ここに何と記載されているかを確認してください。
- 1通目:「土地」や所在地の地番が記載されている
- 2通目:「家屋」や家屋番号が記載されている
このように記載が分かれていれば、土地と建物それぞれに対して正常に課税されている証拠です。
納税通知書と還付通知書を見分ける
軽減措置が関係している場合、「納税通知書」と「(過誤納金)還付通知書」または「(税額)更正通知書」といった、異なる名称の書類が届くことがあります。
納付書が同封されていれば「納税」、同封されておらず「還付」や「充当」などの記載があれば「払いすぎた税金が戻ってくる、または他の未納分に充てられる」というお知らせです。
納税額や課税標準額を確認する
それぞれの通知書に記載されている「課税標準額」と「税額」を確認しましょう。土地と建物の評価額は異なりますし、適用される軽減措置の内容も違うため、通常、税額は同額にはなりません。
もし全く同じ内容の通知書が2通届いた場合は、手違いの可能性も考えられます。
不動産取得税が2回来たときの対処法
理由と通知書の内容が確認できたら、次に行うべきは適切な対応です。基本的には、それぞれの通知書に従って手続きを進めれば問題ありません。
まずは落ち着いて通知書の内容を確認
これまで説明した通り、まずは慌てずに2通の通知書を見比べて、「課税対象」が土地と建物で分かれているか、軽減措置に関する通知ではないかを確認することが最も重要です。
期限内にそれぞれの税金を納付する
課税対象が異なる2通の納税通知書であれば、それぞれが独立した納税義務です。納付書に記載されている納期限までに、金融機関やコンビニエンスストア、自治体の窓口などで忘れずに納付しましょう。納期限を過ぎると延滞金が発生する場合がありますので注意が必要です。
不明な点は都道府県税事務所に問い合わせる
通知書の内容を自分で確認してもよく分からない、二重請求ではないかという疑いが拭えない、といった場合は、納税通知書に記載されている管轄の都道府県税事務所に電話で問い合わせるのが最も確実です。
問い合わせる際は、手元に納税通知書を用意し、通知書に記載されている「整理番号」や「納税義務者氏名」を伝えるとスムーズに話が進みます。
不動産取得税に関するよくある質問(Q&A)
ここでは、不動産取得税が2回届いた際によく寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q. 土地と建物のどちらか一方だけ先に支払うことはできる?
A. はい、可能です。土地と建物は別々に課税されているため、届いた通知書ごとに納付手続きを行います。それぞれの納期限を守っていれば、どちらを先に支払っても問題ありません。
Q. 軽減措置の申請を忘れてしまった場合はどうなる?
A. 軽減措置の申告には期限が設けられていますが、多くの自治体では期限後でも申告を受け付けています。ただし、地方税法上の還付請求権は5年で時効となります。気づいた時点で、速やかに都道府県税事務所に相談してください。
Q. 2通目を無視するとどうなる?
A. 2通目の通知が土地または建物に対する正規の納税通知書である場合、無視すると滞納扱いになります。納期限の翌日から延滞金が加算されるだけでなく、最終的には財産の差し押さえといった滞納処分に至る可能性もあります。必ず内容を確認し、適切に対応してください。
まとめ:不動産取得税が2回来ても慌てずに。
不動産取得税の納税通知書が2回届くと驚いてしまいますが、その多くは「土地」と「建物」で課税タイミングがずれることによる、ごく一般的なケースです。二重請求ではないかと焦る必要はありません。
大切なのは、まず届いた通知書の内容をしっかりと確認することです。「課税対象」の欄を見れば、土地と建物のどちらに対するものかが分かります。その上で、それぞれの納期限内にきちんと納税しましょう。
もし軽減措置が関係している場合や、内容にどうしても不明な点がある場合は、一人で悩まずに管轄の都道府県税事務所へ問い合わせることが解決への一番の近道です。この記事が、あなたの不動産取得税に関する不安を解消する一助となれば幸いです。