こんにちは、山口不動産のユウキです。
古賀市薬王寺にある「偕楽荘」の看板を施工しました。
施工法は、杉板型枠コンクリート打ち放し工法です。
杉板型枠コンクリート打ち放しは仕上がりが美しく、人気の高い施工法ですが、一般的なコンクリート打ち放しに比べ、施工方法が難しく、費用も高くなるため、非常に珍しい建造物になります。
今回は、そんな杉板型枠コンクリート打ち放しの施工方法や流れ、注意点などを解説します。
杉板型枠コンクリート打ち放しの施工方法
ここでは、杉板型枠コンクリート打ち放しの施工方法について解説します。
1.コンクリート圧縮の強度計算&拾い出し
まず、杉板型枠コンクリート打ち放し工法で最も大事なのは、コンクリート圧縮の強度計算、それに伴う、拾い出しですね。
これをきちんと計算しなければ、すべてが台無しになると言っても過言ではありません。
杉板に限らず、コンクリート打ち放し工法は、型枠パネルを建て込み、そこに生コンを流し込むのですが、その建造物に必要とする圧縮強度、型枠に作用する荷重(鉛直荷重、水平荷重、側圧)を計算し、型枠パネルの図面作成、セパレートの位置や本数を拾い出します。
また、新設の場合は比較的簡単ですが、今回のような改修工事の場合、現場の状況に応じて、型枠パネルの締め固め方もイメージしておく必要があります。
ここまでは、一般的なコンクリート打ち放し工法でも同じなのですが、杉板型枠の施工方法が難しいと言われる理由はここからです。
杉板型枠コンクリート打ち放しには、杉の羽目板を使用しますが、今回は1枚135mmの幅にかかる側圧を考えると同時に、仕上がりの美しさを考慮したセパ穴(モッコン)の位置を追求する必要があります。
さらに、一発化粧仕上げの杉板型枠コンクリート打ち放しは、割り付けができないため、羽目板の幅135mmの倍数で天端仕上げになるように、逆算してGL(グランドレベル)の選定、基礎ベースの図面まで作成しておく必要があります。
つまり、生コン圧の強度と、仕上がりの美しさの両方を同時にクリアしなければいけません。何度か図面を書き直したので、この作業だけで2~3日を要しました。
2.ベースコンクリート打設(基礎工事)
この現場(偕楽荘)は、既存の看板を解体撤去してから、ベースコンクリート打設になりました。
この基礎工事におけるポイントは、上物の荷重に耐えられる厚み、地震にも耐えられるサイズで施工し、上物の建造物とベースを一体化させるための基礎立ち上がり鉄筋、そして天端の水平仕上げですね。
マンションなどの建設型枠では、根巻きを40mmで拾い出しますが、一発化粧仕上げの杉板型枠コンクリート打ち放しの場合、根巻きはゼロに近いほど仕上がりが美しいですから、この段階で基礎天端を水平に仕上げておくことが大事です。
3.杉板型枠パネルの加工
ベースコンクリート打設後、基礎ベースの養生期間中に杉板型枠パネルを加工すると効率が良いです。
今回、杉板型枠パネルの加工に使用した木材は、杉の羽目板(うづくり板、節無)、桟木、面木です。
桟木や面木の材料費は比較的安いですが、杉の羽目板は、うづくり板の節無しだったので、4~5万円の高級品です。しかも一度しか使用できないため、杉板型枠コンクリート打ち放しの費用が高くなる理由の1つです。
杉板型枠パネルの加工で最も大変だったことは、無垢材の羽目板が湿度によって膨張、収縮するため、羽目板の幅が135mmピッタリではなかったことです。
各羽目板の幅が±1~2mm程度異なるため、1枚1枚寸法を調整しつつ、仕上がりをイメージしながら、夏目と冬目の木目が美しく映えるように杉板型枠パネルを加工します。
また、杉板型枠パネルの加工は、生コンの側圧が大きいほうを小面、小さいほうを大面で作ります。そうすることで生コン打設時に型枠がバレる(壊れる)リスクが低くなります。
面木を打って、セパ穴を開ければ、ひとまず杉板型枠パネルの完成です。
最後に、完成した杉板型枠パネルにコンクリート剥離剤を塗布します。これは型枠を解体する際に、型枠のコンクリート付着を抑え、表層の仕上がりを良くするための一工夫です。
4.型枠パネルの建て込み
まずは、基礎からの立ち上がり鉄筋が中心になるように墨出しをし、レベルを確認しながら根巻きします。
ある程度、基礎天端が水平に仕上がっていたため、3mm程度の根巻きで済みました。
型枠パネルを仮建てし、鉄筋を組み立てます。鉄筋は150mmピッチのシングルです。
セパ(セパとPコン)を取り付けながら型枠を建て込んでいきます。
建て込みの際は「タチ」を見ながら、すべての型枠パネルが垂直に立っているか、こまめにチェックしながら建て込んでいきます。
建て込む順番に決まりはありませんが、最後にセパを取りやすいように、私の場合は大面、小面、小面、大面の順番で建て込みます。
4面を建て込んだら、フォームタイを締め付けます。フォームタイは、型枠の拘束力を高め、型枠の内部を一定間隔に保ちます。
コンクリート圧のかからない建造物だったら、フォームタイだけの状態でも生コン打設できますが、今回は圧力が大きい建造物なので、次の工程「型枠パネルの締め固め」が必要になります。
5.型枠パネルの締め固め
型枠パネルの締め固めは、生コン打設時にコンクリート圧で型枠が壊れず、変形しないようにする大切な工程です。
まず、型枠パネルの加工時は縦桟を少なくして作っているので、建て込んだ後に縦桟を追加します。縦桟を追加することで横の歪みがなくなります。
縦桟を追加したら、鋼管(60角パイプ)で締め固めます。鋼管で締め固めることで、内部のセパがピンッと張り、型枠のサイズがより整えられます。
また、下部のセパ間隔が狭い理由は、上部に比べ、下部のほうがコンクリート圧が大きくなるため、強固に締め固める必要があるからです。
写真を撮り忘れていますが、鋼管で締め固めた後、パイプサポートでつっぱりながら、足場チェーンとターンバックルで引っ張ることで、型枠全体を強固に固定しています。
6.コンクリート打設
コンクリート打設の写真も撮り忘れていますが、ミキサー車(10t車)から直接打設しました。
コンクリート打設は、コンクリートバイブをしたり、鉄筋の位置を調整したり、型枠を外部から叩いたりなど、合番が忙しく、継ぎ目(コールドジョイント)が出ないようにするためにも、時間との勝負なので、写真を撮っている暇はありませんでした。
しかし、杉板型枠コンクリート打ち放しのコンクリート打設は本当に難しいです。
一般的な型枠コンクリート打ち放しは失敗しても補修できますが、杉板型枠コンクリート打ち放しは、一発化粧仕上げなので、大きな補修はできないからです。
また、コンクリートバイブでノロを上げながら、型枠の模様を付けなければいけませんが、コンクリートバイブをし過ぎると、骨材が下に沈んで下部にジャンカが出来てしまうのです。
さらに、型枠内部の生コンの状態を目視で確認することはできませんから、ノロを上げるべきか、ジャンカの危険性があるかなど感覚的に打設するしかありません。
とはいえ、型枠がバレる(壊れる)ことなく、無事にコンクリート打設できたときは、何度経験しても心の底からホッとする瞬間です。
7.型枠パネルの解体
型枠パネルの解体後、モッコン穴を埋めた状態です。
細心の注意を払って生コン打設しても最下部にジャンカが出来てしまいましたが、最下部のジャンカは想定内であり、補修して埋め戻すため、見えなくなる部分です。
問題は、見える部分である上部の表層の仕上がり具合です。
ある程度のピンホール(気泡による小さな穴)は避けられませんが、全体的に継ぎ目(コールドジョイント)もなく、杉板の模様もくっきりと表れ、夏目と冬目のバランスが良い感じです。
数日後、コンクリートが乾いてから保護用のクリア塗装をし、看板を取り付けて完成です。
コンクリートが完全に乾いたことで、モッコン穴も気にならなくなり、上々の仕上がりと言えるでしょう。
まとめ
今回は、古賀市薬王寺の「偕楽荘」で、“本物”の杉板型枠コンクリート打ち放し工事を行いました。
本物の杉板型枠コンクリート打ち放しじゃなくて、杉板型枠コンクリート打ち放し“風”の施工方法もあります。
例えば、ブロック塀に杉板型枠風のタイルを張ったり、モルタルに木目を転写させる方法などがありますが、杉板型枠風タイルは良くも悪くも綺麗すぎて安っぽく見えますし、モルタルに木目を転写させる方法では、木目がくっきりと出ません。
“本物”の杉板型枠コンクリート打ち放しには、どうしてもピンホールやジャンカが出来てしまいますが、それが本物の証であり、杉板型枠コンクリート打ち放しの味だと思っています。
“本物”の杉板型枠コンクリート打ち放し工事は、決して安い工事費用ではありませんが、当社では杉板型枠コンクリート打ち放し工事を承っておりますので、ご興味のある方は無料お見積もりをご利用ください。
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