ご近所で始まった解体工事。「ゴゴゴ…」という地響きと共に、まるで地震のように家が揺れて、不安な気持ちになっていませんか?
「家は大丈夫だろうか」「この揺れはいつまで続くの?」と、ストレスを感じている方も少なくないでしょう。
解体工事にある程度の振動はつきものですが、その揺れが「地震みたい」と感じるのには、はっきりとした理由があります。
この記事では、なぜ解体工事で地震のような揺れが発生するのか、そのメカニズムから、建物や人への影響、そして私たちができる対策まで、専門的な知見を交えながら分かりやすく解説します。この記事を読めば、あなたの不安が解消され、冷静に対処するための具体的な方法がわかります。
解体工事が地震みたいに揺れる!その気になる原因とは?
静かな日常を揺るがす解体工事の振動。なぜ、まるで地震のような揺れが発生してしまうのでしょうか。その主な原因は、工事内容と使用される重機にあります。
一番の原因は「基礎」の解体
解体工事の中で最も強い振動が発生するのが、建物の土台である「基礎」を解体・撤去する工程です。
コンクリートで作られた頑丈な基礎を、重機を使って地中から掘り起こし、破壊するため、その衝撃が直接地面に伝わり、広範囲にわたって地震のような揺れを引き起こします。
特に、重機の先端にブレーカー(杭打ち機のような機械)を取り付けてコンクリートを砕く作業は、断続的に強い衝撃を与えるため、震度1~3程度の揺れとして感じられることもあります。
重機の使用と移動が地面を揺らす
解体工事に欠かせないショベルカーなどの重機は、そのものが非常に重く、現場内を移動するだけでも地面を振動させます。
また、建物を壊す際のアームの動きや、解体したコンクリートガラなどの資材が地面に落下する衝撃も、揺れの原因となります。
建物の構造と地盤の状態も影響
揺れの大きさは、解体される建物の構造によっても変わります。
一般的に、木造家屋よりも鉄骨造や鉄筋コンクリート(RC)造の建物の方が頑丈なため、解体時により大きな力が必要となり、振動も強くなる傾向があります。
また、お住まいの地域の地盤が軟弱な場合、振動が伝わりやすく、より遠くまで、そしてより大きく揺れを感じることがあります。
その揺れ、大丈夫?解体工事の振動に関する規制と影響
「地震みたいな揺れが毎日続いて、家や体に影響がないか心配…」と感じるのは当然のことです。ここでは、振動に関する法的な規制と、考えられる影響について解説します。
法律で定められた振動の基準値
実は、建設作業に伴う振動については、「振動規制法」という法律で基準が定められています。この法律は、住民の生活環境を守るために、特定建設作業から発生する振動の大きさを規制するものです。
規制値は、区域や時間帯によって異なりますが、一般的には以下のようになっています。
区域の種類 | 昼間(午前8時~午後7時) | 夜間(午後7時~翌日午前8時) |
---|---|---|
第一号区域(住居地域など) | 75デシベル以下 | 作業しないこと |
第二号区域(商業・工業地域など) | 75デシベル以下 | 作業しないこと |
※デシベル(dB)は振動のレベルを表す単位です。75デシベルは、人が「非常に大きい」と感じるレベルの揺れに相当します。
多くの解体業者はこの基準を遵守して作業を行いますが、もし基準を超えるようなひどい揺れが続く場合は、行政への相談も可能です。
建物への影響と確認すべきポイント
通常、法律の基準内で適切に行われる解体工事であれば、近隣の建物をすぐに損傷させるような大きな影響は考えにくいとされています。しかし、連日の振動で以下のような変化がないか、注意深く観察することも大切です。
- 壁紙(クロス)の継ぎ目に隙間ができていないか
- 壁や基礎に新しいひび割れ(ヘアークラック)ができていないか
- 建具(ドアや窓)の開け閉めがしづらくなっていないか
もし、工事が始まってから明らかな異常が見られた場合は、証拠として日付の入った写真を撮っておきましょう。
心身への影響とストレス
継続的な揺れは、建物だけでなく私たちの心身にも影響を及ぼすことがあります。「いつ揺れるかわからない」という不安感や、振動による不快感は、知らず知らずのうちにストレスとなります。人によっては、めまいや頭痛、不眠といった体調不良につながるケースも報告されています。
地震みたいな揺れに悩んだら?近隣住民ができる対策と相談先
我慢できないほどの揺れや、不安が続く場合、どうすればよいのでしょうか。一人で抱え込まず、適切なステップを踏んで行動することが大切です。
ステップ1:まずは状況を記録・確認する
感情的に苦情を伝える前に、まずは客観的な事実を整理しましょう。
- 揺れを感じる日時と時間を記録する:いつ、どのくらいの時間、どのような揺れがあったかをメモしておきます。
- 工事内容を確認する:工事現場の看板を見て、解体業者名、連絡先、工事期間などを確認します。通常、工事前には業者による挨拶状などがポストに投函されているはずです。
- 被害状況を写真に残す:もし自宅にひび割れなどの変化があれば、日付がわかるように撮影しておきます。
ステップ2:工事業者へ冷静に相談する
まずは、工事を行っている解体業者へ直接連絡し、状況を伝えてみましょう。
その際は、感情的にならず、「〇日の〇時ごろ、家がかなり揺れて不安に感じているのですが、どのような作業をされていたのでしょうか?」などと、冷静に事実を伝えることがポイントです。
優良な業者であれば、作業内容の説明や、振動が大きくなる時間帯を事前に知らせてくれるなどの配慮をしてくれる場合があります。
ステップ3:公的な相談窓口を利用する
業者に相談しても改善が見られない場合や、対応に納得できない場合は、第三者に相談しましょう。
- 市区町村の公害担当窓口:多くの自治体には、騒音や振動に関する相談窓口(環境課など)が設置されています。相談内容によっては、業者が規制基準を守っているか現地調査を行い、指導や勧告をしてくれることがあります。
- 法テラスや弁護士:建物に明らかな損害が発生し、補償問題に発展しそうな場合は、法律の専門家への相談も選択肢の一つです。
まとめ:解体工事と地震みたいな揺れについて
この記事では、解体工事でなぜ地震みたいな揺れが発生するのか、その原因と影響、そして私たちが取りうる対策について詳しく解説しました。
解体工事の揺れの主な原因は、重機を使った基礎の解体作業にあります。振動には法律による規制値が設けられており、通常はこの範囲内で作業が行われます。しかし、地盤の状態や建物の構造によっては、体感として大きな揺れになることも事実です。
もし「地震みたい」な揺れで不安を感じたら、まずは工事の状況を確認し、冷静に業者へ相談することから始めてみてください。それでも解決しない場合は、市区町村などの公的な窓口があなたの力になってくれます。正しい知識を持ち、適切な手順で対応することが、不安の解消と問題解決への一番の近道です。